歴史は、年号や人物を暗記する教科だと捉えられがちだが、実は「何が起こったか(年号・人物・イベント)」を超えて、「それをどう伝えるか」「今までどう伝えられてきたか」を考え始めると、ぐんと面白くなる。要は、ストーリーを伝える学問である。
世界には、驚くほどたくさんの「伝えられていない」ストーリーや「抑圧された」ストーリーがあり、それをひとつひとつ掘り起こすことが歴史学者の使命だと思っている。そういった意味で、女性学やジェンダー学、社会学、政治学、アメリカ黒人史学やアジア人・アジア系アメリカ人史学等とも重なる点が多く、多分野にまたがる(interdisciplinary)学問である。また、歴史は過去の話を様々な角度から伝えることではあるが、そのストーリーを現在に繋げることで、近現代史がどのように現在の社会を作り上げているかを理解することで、より深い意義を持つ。
今の世の中に繋がる新しいストーリーを伝えていきたい人におすすめ。(Haruka Sano)
批判的思考。物事の裏側を追求するパッション。
ときに方法が定まっていない、定性的な研究に対するモチベーション。
読むこと、書くことが好きなこと。(Haruka Sano)
現代中国、韓国、日本におけるジェンダー・セクシュアリティの概念や、様々な形のフェミニズムについて、一次史料を中心に研究を進める、歴史学上級セミナー。各国政府が強いてきた「女性」の在り方や、上野千鶴子の「家父長制と資本制」について、教授と他の受講者約10名と議論を繰り返す。
筆者は、後に卒業論文に使うことに決めた、女性の「ケアワーク」という概念を学び、最終論文20ページでは、NHKの朝の連続テレビ小説が作り上げてきた戦後の国家的女性像について論じた。担当教授で、筆者の卒論アドバイザーにもなった、香港出身のAngelina Chin教授とは、卒業後も何度かごはんに連れて行ってもらっている。
(Logo: Pomona College)
Haruka Sano
20世紀にcommunities of colorが進めてきた社会運動について勉強し、次世代の教育のためにアウトプットする授業。
比較的入門レベルで、アメリカ黒人史に限らず、Chicanx/Latinx studiesやアジア系アメリカ人史も網羅し、アメリカ国外の運動とも結びつけて学ぶ。よくアメリカ史でも取り上げられる、モンゴメリー・バス・ボイコットやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの活動について、主流の歴史教科書やメディアでは触れられない、よりラディカルな歴史を一次史料から読み解く。また、よくある歴史の授業のように難しい理論や専門用語を並べて論じるのではなく、高等教育を(まだ)受けていない人(小中学生等)にも伝えるにはどうすればよいのか工夫し、わかりやすい言葉で発信するところまで持っていく、歴史のアクセシビリティに配慮した授業である。
担当のTomás F. Summers Sandoval教授は音楽好きで、毎回授業の最初はその日の授業に関連する曲から始まった。一番印象に残っているのはBillie Holidayの「奇妙な果実」。
(参考: https://allpower.wordpress.com/)
(Logo: Pomona College)
Haruka Sano
歴史に対して「海」という新しい視点でアプローチする、歴史学上級セミナー。
西欧の帝国主義・植民地主義が広がる以前、インド洋を取り巻く領域(中東、アフリカ、南アジア、東南アジア等)において「国境」という概念は薄く、スパイス貿易やイスラム教の普及が海を軸に進んでいたというのが、担当教授Arash Khazeni教授の考え方。一度「大陸」「国家」という視点を取っ払ってインド洋の世界史に向き合うと、その中で日本が占めていた位置を捉え直すことができ、当時の鎖国時代の日本の「外国」との繋がりを再発見できた。
教授はこの分野に対するパッションが熱く、いつも話し過ぎてしまう。
(Logo: Pomona College)
Haruka Sano
オーバリンの街の公立小学校で、黒人女性として初めて教師になったBetty Glenn Thomasの人生を記録に残そうとオーバリンの大学と街が共同で行うリサーチプロジェクトに参加する授業。
オーバリンの街と大学が同時に開拓・設立されて以来、様々な時代を乗り越えてきた歴史を学んだのちに、Betty Glenn Thomasを知る街に人へのインタビューや、大学や街の図書館に残る貴重な資料に実際に触れ、一人の女性の人生と、そして取り巻く環境・当時の情勢についてまとめていく。何年にもわたって行われてきたリサーチプロジェクトに参加できたり、なかなか触れることのない当時の資料に触れたり、口述史の研究方法を学んだりと、貴重な経験がたくさんできるクラス。また、研究成果はウェブサイトとして出る予定で、毎年この授業を取った学生が引継ぎ、完成に向けてがんばっている。
(Logo: Oberlin College)
Ryo